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「木は神聖なものだ。木と話をし,木に傾聴することのできる人は,真理を体得する。」
“Trees are sanctuaries. Whoever knows how to speak to them, whoever knows how to listen to them, can learn the truth.”
by Hermann Hesse, Bäume. Betrachtungen und Gedichte
(日本語訳:岡田朝雄)
このHesseの詩の一節は,「木」と言う言葉を「生命」「自然」あるいは「すべて」に置き換えても成り立つと思います。なぜ,Hesseは「木」としたのでしょうか?
私は,立派に生育した巨木を見上げる時,あるいは木材を構築している細胞の営みを光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察する時,「木」の神聖さを容易に感じます。「木」の巨大さや精巧さを目の当たりにすると,私は謙遜にならざるを得ません。日々,そのようなことを思いながら真理に近づきたいと思って研究しています。
木材の細胞壁を構築する細胞の営みを見る
木材の細胞は電子顕微鏡の試料としてはかなりの難敵です。細胞の長さはmmオーダーに及ぶうえ,分厚い二次壁は固定液や樹脂の浸透のバリアになるだけでなく,極めて硬いので超薄切片作製も大変です。従来の化学固定法では捉えることの出来なかった細胞膜や細胞小器官の本来の様子が,急速凍結や高圧凍結を用いた凍結置換法によって見えるようになってきました。これらの方法が誰でも使いこなせて一般的な方法となるように,実験手法の改良を行っています。