樹木の幹が作られる仕組み
維管束形成層と呼ばれる細胞分裂 装置が幹を取り巻き、春から秋にか けて盛んに細胞を生み出しています。個々の細胞は厚さ1~6µmの細胞壁 を作ります。完成された細胞壁は中 空のパイプのような構造をしていま す。樹木の幹はこのような構造の集 合体なのです。そのため、幹は軽量 かつ強靭となり、巨大な生命体を支 えることができるようになります。この優れた性質により、樹木の幹、すなわち木材は建築用材や家具とし て広く利用されています。
細胞壁を作る細胞の営み
電子顕微鏡を用いると、細胞壁を形成している細胞中に色素体、ミトコンドリア、粗面小胞体、ゴルジ装置などを見ることができます。大気中の二酸化炭素と光エネルギーを利用して作られた光合成産物は、このような細胞に運搬されます。そして細胞はこれをもとに細胞壁成分を合成し、細胞壁に輸送します。
細胞壁成分の生合成に関与する酵素の分布を調べると、細胞のどこでどのような反応が起こっているのかが分かってきました。たとえばリグニンの生合成では、リグニン前駆物質は細胞内では重合せず、細胞壁中で重合して3次元高分子になります。
細胞壁成分の分布と機能
樹木の細胞壁は約50%のセルロースと、20~30%のヘミセルロース、20~30%のリグニンで構成されています。セルロースは細胞壁に強度や柔軟性を与え、リグニンは細胞壁に強度を与えるとともに水を通さぬ機能を賦与します。またヘミセルロースはセルロースとリグニンの聞を取り持つ成分と考えられています。
免疫電子顕微鏡法によりヘミセルロースやリグニンの細胞壁内での分布が明らかになりました。